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2022年劇場上演作品

第26回劇作家協会新人戯曲賞受賞作

 

作:竹田モモコ

わたしは「なや」が嫌いでした。「魚のふし工場」のことを地元では「なや」と呼びます。

「なや」は私の嫌いな魚の匂いを四六時中撒き散らしていて、「すす」で真っ黒で奥行きが分からず、地下からはごうごうと薪を焚く音が聞こえてきて冥界の入り口のようだし、そこで笑いながら素手で魚を捌く女性たちもなんだかそら恐ろしく、私は近寄らないようにしていました。

嫌いということは目が離せないということです。長年の恐ろしさや忌避感はいつの間にか反転して興味と愛着へと変わり、「なやの女」を描いてみたいと思うようになりました。

今回はそんな「なや」を経営する姉妹のお話です。他にも従業員や通りすがりの空き巣もでてきますが、みんなはたから見たらどうでもいい悩みやをこだわりを大事にピカピカに磨いてしまっています。

真っ暗でごうごうと音をたてるなやを舞台に、そのぴかぴかを持ち寄り、見せ合い「うん、よく分からない。」と言い合うばかみたいなお話です。

「うん、よく分からない。」

「理解できない。」

「自分とは違う」

だからなんだ。そんなものは薪にしてくべてしまえ。もしくは素手で捌いてしまえ。

笑いながら。

ばぶれるりぐる『いびしない愛』上演台本

SKU: UMI2024060405
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